2014/01/15 - 20:12

公安情報流出で都に9千万賠償命令~違法捜査とは認めず

 
警視庁公安部の内部資料とみられる捜査情報がインターネットに流出した事件で、個人情報を収集され文書に記載されたイスラム教徒17人が、国と東京都を相手に慰謝料を求めて訴えた裁判の判決が15日、東京地裁であり、始関正光裁判長は都に対し計約9000万円の支払いを命じた。国への請求は棄却した。
 
判決で始関裁判長は、流出情報が警察庁が保有していたものと認定。その上で、国際外事第3課内の管理体制が不十分だったと指摘。「インターネットへの情報流出は、原告らに多大な被害を与えた」とプライバシーの侵害があったことを認めた。一方で、国内で暮らすイスラム教徒全てを「テロリスト予備軍」として情報収集していたいた点については、「国際テロを未然に防止するためにはやむを得ない捜査だ」と判断した。
 
原告弁護団の上柳敏郎弁護士は判決後の記者会見で、「流出データが警視庁のものであると認定され、原告一人当たり550万円の損害賠償は認められたことは大きく、被告に認識してほしい」と指摘。「東京都・警察に謝罪してもらう基礎となる」と評価したものの、判決が、情報収集そのものの違憲性を認めなかったことについては、「原告の人権が侵害された点については配慮を欠いた」と厳しく批判した。
 
原告のイスラム教徒の外国人男性は「生活や人生をめちゃくちゃにされたことには変わりはない。イスラム教だから、すべての人をテロリストと見るのは間違いだ」と訴えた。さらに、自らの情報が海外に流出し、「どこかで捕まる可能性があり、もう4年も国に帰っていない」「これでは家族にさえ会えない」と憤りをあらわにした。
 
別のイスラム教徒の日本人男性は、「今回の警視庁公安部の捜査方法は、テロ防止捜査を大義名分にしたテロ誘導捜査である。警察公安の捜査のやり方は、国内すべての在日イスラム教徒を全てテロリスト予備軍にしており、捜査のやり方自体が間違っていたと認められない限り、私たちの訴えは認められない」と述べた。
 
警視庁公安部外事三課が保有していたとミラッッルデータファイル114点がインターネット上に流出したのは2010年10月。出した捜査情報によると、国内に暮らす1万数千人のイスラム教徒を「テロリスト」 とみなし、モスクを監視し、尾行し、家族関係を調べ、金融機関などの民間情報を収集していたが、警視庁は流出情報の保有を否認。このため、インターネット上の情報の被害が拡大した。原告は控訴する方針。
 
判決要旨
http://k-bengodan.jugem.jp/?eid=44
参考文献
「国家と情報――警視庁公安部「イスラム捜査」流出資料を読む」(大月書店)
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-5663-7.htm
 

 


 

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