東京電力福島第1原発事故に伴う福島県民の健康調査について議論している「県民健康調査」検討委員会で31日、今年3月末までに、246人が甲状腺がんの疑いがあると診断され、200人が甲状腺の摘出手術を受けたと発表した。
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https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-39.html
今回、新たに公表されたのは、2巡目の手術症例と4巡目(2018年〜19年)の検査結果。2014年〜15年にかけて実施された2巡目検査で悪性と診断され、その後、経過観察を続けていた患者のうち2人が、新たに甲状腺摘出手術を実施し、いずれも術後の病理診断で乳頭がんと診断された。
また4巡目では、新たに5人が甲状腺がんの疑いがあると診断され、甲状腺がんの悪性が疑われる患者は21人となった。また新たに2人が手術を受け、一人は乳頭がん、一人は濾胞がんと診断され、甲状腺がんと確定したのは13人となった。3巡目と25歳の節目検診の今年3月までの検査結果は、6月15日に開催された「甲状腺検査評価部会」ですでに公表されていた。
今年度の学校検診、高校では実施せず
新型コロナウイルスの影響を受け、今年3月から実施を見合わせていた学校での検査については、検査の実施内容を大幅に見直し。今年度415校で計画していた甲状腺検査をのうち、257校での検査を来年度以降に見送ることを提案。今年度、学校で検査する対象者は、約9万人から約2万人と4分の1以下に減ることとなった。
具体的には、今年3月に実施予定だった4巡目の検査(いわき市内の16校2000人が対象)は9月以降に予定通り実施するものの、今年4月以降にスタートする予定だった5巡目検査は大幅に変更。避難区域13市町村、桑折町、国見町、二本松市、本宮市、大玉村など135校15,200人と県立・国立・私立校17校のうち、今年度の検査を希望した7校2400人は予定通り実施する一方、福島市、白河市、天栄村、西郷村、泉崎村、郡山市、三春町の195校42,800人は来年度以降にずれ込む。また県立高校での検査は一切、実施しないこととなった。対象者は52校21,000人の検査にのぼる。
同検査では、高校を卒業した18歳以降の受診率低下が課題になっていることから、鈴木元甲状腺評価部会長が、「高校3年生を優先的に受けされるなどの対応は考えているのか」と質問。しかし1学期の休校により、授業に遅れが生じているため、今年度の検査の見送りを決めたという。早期の検診を希望する子どもに対しては、学校以外の検査実施機関を案内する。
学校での検診状況調査へ
また検討委員会では、小中学校や高校などで一斉に行う検査について、具体的な調査に入ることも決めた。9月から11月にかけ、県職員が県内20校程度を訪問し、検査状況を視察するほかヒヤリング等を実施。小、中学校と高校で行われている学校検査に対する保護者らの認識を調査する。
学校で一斉に実施されている甲状腺検査をめぐっては、一部の専門家が任意性が確保されていないのではないかと批判。学校での検診をやめるよう主張してきた。今回の調査はそうした背景を受けたもの。検査の運用状況や、検査を受ける選択の自由が担保されているかなどについて聞き取る。
県の甲状腺検査が学校で行われる際には、主に授業時間に行われて、ほとんどの児童や生徒が参加していることから、一部の専門家からは検査を受けるかどうかを子どもが決められるよう、授業以外の時間に行うことを求める意見などが出されていました。
このほか検討委員会の星北斗座長は、学校関係者以外にも調査の幅を広げことを提案。了承された。次回の検討委までに聞き取りする保護者の規模や具体的な手法、実施時期を検討し、提案する予定だ。