福島第一原発事故
2020/02/28 - 11:14

実測数より多いデータ解析〜宮崎早野論文に新疑惑

「第1論文」表1の2014年Q3に2万1,080人と記載されているが、配布した人数は1万6,037人。

住民6万人の被曝データが、研究者に不正提供された疑いがあるとして、福島県伊達市が調査を行なっている問題で、研究者が解析した論文上のデータが、実測された住民人数のより多い期間が存在することがOurPlanetTVの取材で分かった。伊達市では16037人にしかガラスバッチを配布していなかったにもかかわらず、論文の解析データは2万人を超えていた。

問題となっているのは、福島県立医科大学の宮崎真講師と東京大学の早野龍五名誉教授が、2016年から2017年にかけて国際的な科学誌に投稿した2つの論文データ。伊達市が、2014年の第3期(10月〜12月)に住民に配布したガラスバッチは約1万6000だったにもかかわらず、論文では2万1,080人のデータが解析されていた。

2万1,080人という人数は、2013年7月から2014年6月までの1年間に、年間を通してガラスバッチを計測した人口と一致するため、前年のデータを流用した可能性がある。


「第1論文」図4(f)第9次航空機モニタリングデータと2万1,051人の個人線量データを解析したグラフ。


平成27年度伊達市放射能対策調整会議資料抜粋。2014年10月~12月に配布されたガラスバッチは1万6037人。

4箇所の使用〜論文の結論に影響
実測数と異なるデータが論文に登場するのは、2016年に投稿された「第一論文」3ヶ所と、2017年に投稿された「第2論文」の1箇所の計4ヶ所。「第1論文」の図4(f)では、2014年11月に実施された「第9次航空機モニタリング」と個人線量の関係性を示すグラフに登場しており、論文の結論に直接影響する。

また「第2論文」の図5は、事故から51ヶ月間分の被曝データをもとに生涯線量を導き出すもので、こちらも結論に直結するが、40ヶ月目にあたる2014年7月以降のデータを入手せずに、グラフを作成した可能性がある。

伊達市では年間5ミリシーベルト以上のBエリアについて、2014年6月までは全住民を対象に計測をしていたが、2014年7月からサンプリング調査に転換したため、計測者人数が大幅に減っていた。

宮崎氏が医大の調査に虚偽の供述か
同論文は、同意を得ないデータが使われているなどとして、伊達市の住民が一昨年、東京大学と福島医大に研究不正を申し立てたが、いずれの大学も昨年7月、「不正はなかった」とする結論を公表していた。しかし、OurPlanetTVの取材によると、福島医大の研究不正の調査で、宮崎氏が2015年8月に伊達市職員から受け取ったとされるCDには、2014年7月以降のデータが含まれていないことが判明。宮崎氏が不正調査の過程で、虚偽の証言をした疑いもある。

調査を行なった福島医大と宮崎氏は、OurPlanetTVに対し、伊達市の調査委員会で現在調査中のため、回答は控えたいとしたが、事実関係について否定しなかった。また早野氏に対しては、2月半ばから事実関係に関する答えを求めてきたが、28日までに回答がなかった。

伊達市の検証委員会の報告書は見送り
ガラスバッチ データ提供の経緯を調査している伊達市の検証委員会は2月10日、とりまとめる予定だった報告書の提出を見送り、3月以降に延期した。

2月10日に開催された第10回検証委員会後の委員長会見

ガラスバッチ データ提供の経緯を調査している伊達市の検証委員会は2月10日、とりまとめる予定だった報告書の提出を見送り、3月以降に延期した。

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