原子力規制委員会に本来保管されているはずの公文書約10万件のうち、約2割にあたる18,400件が所在不明となっていることが、OurPlanet-TVの取材でわかった。中には、明日の規制委員会で適合審査が了承される見通しの女川原発2号機の審査書類の原本も含まれているとみられる。
原子力規制庁によると、所在が分からない文書は、電子政府窓口「e-Gov」に行政文書ファイルを公開しているものの、文書の現物が見当たらない約9,300件と「e-Gov」に行政文書ファイルを公開していない約9,700件。原子力規制庁は、原子力規制庁が発足する前に原子力規制に携わっていた旧組織、文科省や原子力安全保安院から引き継いだ放射線規制や核燃料サイクルの資料が多いと説明するが、OurPlanetTVの取材によると、原子力規制委員会発足後に新規制基準下で審査を進めた実用炉の審査関係文書も含まれており、電力会社から提出された申請書類も所在がわからなくなっている。
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内閣府に虚偽の報告か
規制委員会は2015年10月、「公文書等の管理に基づく法律」で義務づけられている「行政文書ファイル管理簿」を作成していなかったことが判明。これを機に長官をトップに据えた文書管理適正化チームを設置し、文科省や保安院など旧組織から引き継いだ行政文書の整理に着手していた。
整理の過程で、現認できない文書が多数あることが判明したが、公表はせず、公文書の管理状況を取りまとめている内閣府にも報告をしていなかった。規制庁、所在不明の文書の中には、電子政府「e-Gov」に掲載されている文書と重複しているものもあるなどとして、外部の事業者に照合を依頼しているが、残りの文書の対応は未定だという。
「原子力規制委員会は2012年の発足直後、資源エネルギー庁からの移管の142件の公文書ファイルの紛失があり、内閣総理大臣から行政文書の適正な確保についてどの層な措置を講ずるか報告を求められた。当時、改善措置の報告を提出したにもかかわらず、その後の7年の間、これほど多数の行政文書が確認できないというのは、よくここまで隠し通してきたなという印象だ。ファイル管理簿に登録されていながら、ファイルがない文書が大量にあるとすると、適正な廃棄手続きを経ずに文書がなくなっていることになり、違法に廃棄した可能性も出てくる。規制官庁として、このような説明責任の基礎となる行政文書の管理という基本的なルールが守られていないのは極めて問題であり、組織の信頼性や存続にも関わるようなレベルだと言える。」
「不適正な公文書管理が発覚した2015年に、長官をトップにした文書管理適正化チームが発足したため、状況は改善されたと思っていた。ただ最近、規制委員会の情報公開をしても「不存在」となるケースが多く、不信感を抱いていたが、このように大量の文書が所在不明となっているとは驚きだ。原発の検査・審査結果や、電力会社にどんな指示を出し、どんなやりとりを積み重ねたかなどの文書は、厳格な規制の要となる情報。こうした文書が管理できない組織が、重大な事故が許されない原子力分野の規制が行えるのか疑問だ。」