東京電力福島第一原子力発電所に伴う被曝問題に取り組む市民らが26日、原子力規制庁および内閣府の原子力被災者生活支援チームの担当者と面会し、年間20ミリシーベルトという避難基準について意見を交わした。交渉の中で、2011年3月11日に政府が出した「原子力緊急事態宣言」の交付範囲が決まっていないことが露呈。法的な枠組みがあいまいな中、避難指示や解除が行われている実態が浮き彫りになった。
事故発生直後から年間20ミリシーベルトに設定されている避難指示基準について、支援チームの野口康成参事官は、20ミリシーベルトは、ICRP(国際放射線防護委員会)が定めている「緊急時被曝状況」の100ミリシーベルトから20ミリシーベルトのバンドの一番下であると回答。一方で、緊急事態宣言はどのエリアを対象としているのかという質問に対しては「にわかにはわからない。個別にこのエリアとされるものではないと思う」と回答。これに対し、「日本全体ではないのか」と問われると、「法的に、緊急事態宣言が交付されているエリアは決められていないと思う。」と述べた。
佐藤直己課長補佐(原子力規制庁 放射線防護企画課)
「原子力対策特別措置法」や政府による「避難指示」の基準は、原子力規制委員会などの助言を受ける体裁をとっているものの、経済産業省の旧原子力安全保安院から出向したメンバーが中心でに組織された「原子力被災者生活支援チーム」が担っている。しかし法的な基準がない中で、8年が過ぎ、現在も緊急時被曝状況の20ミリシーベルトによって避難指示解除が行われていることについて、国連人権理事会などから勧告を受けている。
そんな中、国が最近、空間線量ではなく、個人線量による被曝管理や基準の運用を打ち出しており、被災者は反発している。交渉にあたった市民らは、原発事故後の避難基準や運用、賠償や住宅支援の打ち切りが、法的なルールもなく、一方的に決められているとして、国に公聴会を開催するよう求めた。