福島県が実施している甲状腺検査をめぐり、4巡目「実施計画」の目的から「甲状腺の状態を継続して確認する」といった文言が削除されていた問題で12日、県は削除を見直す考えを示した。定例議会の福祉公安委員会での古市三久議員の質問に対し、県民健康調査課長が答弁した。
原発事故を受けて2011年にスタートした福島県の甲状腺検査は、「甲状腺の状態を把握する」ことと「子どもの健康を長期に見守る」という2つの目的が掲げ、概ね2年ごとに検査を実施してきた。今年度末までに1巡目から3巡目が終わり、5月から4巡目の検査が始まる。ところが、4巡目検査の「実施計画」では目的は一変。「データの把握」に該当する文言が削除され、「子どもを長期に見守る」とだけ記載されていた。
4巡目の検査目的
このことに対し、古市議員は、「子どもたちを軽視している」「いったい何のための検査なのか」と指摘。「これからも引き続き把握に務めるべきだ」として、県の姿勢を質したところ、井出孝利保健福祉部長は「4巡目となれば、過去と変化があったかないかを調べていく必要があるのは当然で、その時点の状況を把握するのは出発点」と回答。さらに鈴木県民健康調査課長は「目的は元に戻すか、元に近い形に戻すことを含め、医大と協議する」と、検査の目的を見直し考えを示した。
削除の経緯は闇
「甲状腺の状態を継続して確認する」という目的の削除について、県民健康調査課長は「計画の目的については、医大と県の間で事務的に修正した」と説明。すでに県も合意していたことが明らかになった。5日の検討委員会で、福島医科大の大津留晶部門長は「医大の放射線医学県民健康センターの甲状腺専門委員会等で認めてもらった」「大した議論は出なかった」と述べている。
しかし、わずか2つの検査目的のうち、1つが丸々削除される大きな変更にを、誰がいつ、どのような意図をもって行ったのかは明確にならなかった。
甲状腺がんの全症例把握などを追及〜質疑1時間
この日、古市議員は約1時間にわたり、甲状腺検査について取り上げた。現在、県の検査では、2次検査結果までしか枠組みに含まれていないのは問題があると指摘。症例把握など臨床情報も含め、データベースの一本化をはかるべきではないかと質したが、県は、「臨床の研究は把握できない」の一点張りで、「データに含まれていない症例」については現在、医大が調査を進めていると回答するに留まった。
これに関し、古市議員は、県民健康調査でがんが見つかった患者について医療費を助成する「甲状腺検査サポート事業」の対象を、事故当時18歳以下の全県民を対象にし、データの把握を行っていくべきだと提言。実施要領を変えるよう迫ったが、県から明確な回答はなかった。
さらに、現在、議論となっている学校での集団検診については、中止するのではなく、むしろ、予算を割り当てて学校への負担軽減をはかる一方、養護教諭などへは病気の情報を提供するなど、学校との連携をはかるべきだと述べた。これについて、県は、教育委員会と検討すると述べた。