東京電力福島第1原発事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の3回目の公判が8日、東京地裁で開かれ、検察官役の指定弁護士と弁護団が、それぞれ新たな証拠を提出した。
検察官役の指定弁護士が提出したのは、福島第一原発の津波対策に携わっていた東電土木グループの社員のメールなど3点。政府の地震調査推進本部が2002年に公表した長期評価についてをもとに、東電は2008年、高さ15.7メートルの津波が襲来すると計算し、実際に津波対策の工事に着手しようとしていた状況を裏付ける証拠と見られる。
一方、弁護側は、検察の供述調書をはじめ64点を提出。内閣府の職員が疑問が信頼性に疑問があるなどとして、担当者に公表を延期するよう求めたメールや供述などを読み上げた。また、検察が本件を不起訴にする過程で作成していたとみられる津波シミュレーションなども提出。東日本大震災に伴う津波が、過去の科学的な知見と比較して極めて大きく、予測できなかったとの主張をする証拠と見られる。
裁判では、東京電力の元会長の勝俣恒久被告、元副社長の武黒一郎被告、元副社長の武藤栄被告の3人が、原発事故をめぐって業務上過失致死傷の罪で強制的起訴されたもの。裁判では津波を事前に予測できたかや対策をとることができたかなどが争われている。9月までに約20人の尋問が行われることになっている。
被告らへ対する告訴・告発に取り組み、刑事裁判を支援してきた『福島原発 刑事訴訟 支援団』のメンバーらは終了後は会見を開催。検察役の協力弁護士である海渡雄一弁護士は、被告側が新たに示された証拠について、「新味はなかった」と評価。多くがすでに東電株主訴訟などで否定されているものも多く、反論は限定的であるとの見方を示した。
また甫守一樹弁護士は、弁護側が示した証拠の中に、明治三陸津波と東日本大震災の津波を比較する資料を検察が作成していたことを問題視。使用しているパラメータも恣意的であるとして、「検察庁が不起訴にするための資料を沢山作っていることが分かった」と批判した。
次回の公判は2月28日。津波の試算た対策を行った東電設計の担当者の証人尋問が行われる。公すでに決まっている公判期日は以下のとおり。
4月10日(火)、11日(水)、17日(火)、24日(火)、27日(金)、5月8日(火)、9日(水)、29日(火)、30日(水)、6月1日(金)、6月12日(火)、13日(水)、15日(金)