JSCの定例会見に大成建設が出席したのは、今年3月、新国立競技場で工事にあたっている作業員が過労自殺したことを受けたもの。工事作業員の待遇改善策として、看護師が常駐する健康相談室や電話ホットラインの設置や残業時間を20時までとすることなどを発表した。
一方、工期の見直しはしないと明言。大成建設の伊藤統括所長は、「予定通り進捗しているので、負荷がかかっている事実はない」とし、1年2ヶ月遅れで工事が開始された影響はないと主張した。またJSCの望月禎理事は「工期は短いが、過労死は工期が要因ではない」と述べた。
今回、勤務時間は長くとも20時には終了するとのルールを徹底すると発表したものの、下請け企業の事業所で行われている書類作成などの残業は把握することが難しく、どこまで時間外労働が減るのかは不明だ。
陸上競技場としては使用できず〜レガシーなくなる
定例会見ではこの他、サブトラックが常設できないため、五輪開催後には陸上競技場としての機能をなくすことを発表。球技専用のスタジアムに改修する方針が説明された。以前の国立競技場は陸上競技場としての側面が強かったため、記者の間からは「国立競技場のレガシーはなくなった」との声もきかれた。
また構造面では、メインゲート周辺の広場を大きく削り、テレビ用の中継車両が駐車するスペースを確保する設計変更が発表された。この計画変更で、外苑前から通じるメインゲート付近は非常に狭くなる予定で、入り口付近の混雑緩和が今後の課題となるほか、聖火台の位置についても不透明さが増した格好だ。
(左)当初の計画 (右)大会時の計画案。中継車用のスペースが広がる。
計画図(C)日本スポーツ振興センター
【YouTube】「工期は見直さない」新国立競技場の過労死問題で
https://www.youtube.com/watch?v=juPn3SpaARk