司会の山下俊一副学長(左)と鈴木眞一教授(右)
日本甲状腺学会の第50回目の学術集会が26日と27日の二日間、福島市内で開催され、最終日には、市民向けの講座も開かれた。市民講座で司会を務めたのは、福島県で実施されている甲状腺検査を牽引してきた福島県立医大の鈴木眞一教授と山下俊一副学長。市民ら80人が参加したが質疑時間はなく、肝心の検査に関する話はなかった。
講座ではまず、甲状腺治療で知られる伊藤病院の元医師で、現在は福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センターに所属する坪井久美子医師が「甲状腺のはたらきと病気について」に解説。続いて、米国留学から昨年帰国した福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座の岩舘学講師が「甲状腺がんの手術について」話をした。さらに、ベラルーシ・ミンスク甲状腺がんセンターのビクトル・コンドラードビッチ副院長が、チェルノブイリの経験を紹介。チェルノブイリ原発事故後に甲状腺がんが急増した状況について説明した。
(1)「甲状腺のはたらきと病気について」(18分)
(坪井久美子/福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター)
(2)「甲状腺がんの手術について」(27分)
(岩舘 学/福島県立医科大学 甲状腺内分泌学講座)
(3)「チェルノブイリ原発事故と甲状腺がんについて」(18分)
(ビクトル・コンドラードビッチ/ミンスク甲状腺がんセンター副院長)
※逐次通訳:高橋純平(長崎大学ベラルーシ拠点代表代行)
最後に登壇したのは、昨年、金沢医科大学から福島県立医科大に着任した織内昇教授。織内教授は、放射性ヨウ素など放射性物質を用いた治療である「核医学」の専門家で、福島医科大に今年オープンしたアイソトープ病棟で、甲状腺がんが遠隔転移した患者に対する治療を行っている。日本最大のアイソトープ施設に関する紹介や甲状腺の画像診断。放射線治療の最前線について解説した。
(4)「甲状腺の画像診断と放射線治療 福島医大では何ができるのか」(36分)
(織内 昇/福島県立医科大学 先端臨床研究センター)
福島県で実施されてい甲状腺検査では、この6年間に190人を超える子どもたちが甲状腺がんと診断され、150人以上が摘出手術を受けている。多発の原因をめぐっては、放射線による過剰発生を指摘する研究者がいる一方で、見つける必要のないがんを見つけているとする「過剰診断論」が浮上し、現在、検査の見直しが検討されている。
「被曝影響」が原因だとすれば、ヨウ素剤の服用基準を主導した山下教授の責任が問われ、「過剰診断」が原因だとすると、診断や治療に関与している鈴木教授の責任が免れないという関係にあるが、司会の二人が同検査に言及することはなく、質疑時間もないまま、2時間弱の講座が終了した。終了後、二人は市民との交流を避けるかのように、通用口から退出したため、市民が失望を洩らした。