東京電力福島第一原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の検討委員会が6日、開催され、事故当時5歳だった子どもにも甲状腺がんが見つかったことが分かった。検討委員会では3月末に発表した「中間とりまとめ」において、「事故当時5歳以下からの発見がないこと」などを理由に、「放射線の影響とは考えにくい」と評価していた。1巡目と2巡目の健診をあわせて、悪性・悪性疑いと診断された子どもは、前回より6人増え、172人となった。
「甲状腺検査」についての議論
本格検査(2巡目)結果~2014年~2015年
福島県立医大の大津留晶教授はまず、2014年から2015年に実施された本格検査(2巡目)の結果を報告した。それによると、2次検査で穿刺細胞診を行い、悪性または悪性疑いと診断された子どもは前回より6人増えて57人となった。
資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/167943.pdf
57人の先行検査結果は、A1が28人(49.1%)、A2が25人(43.8%)、B判定は4人(0.7%)だった。A2判定だった子どもうち、結節があった子どもは17人、なかった子どもが18人だった。平均腫瘍径は10.4ミリで、最大は35.6ミリ。この2年間で腫瘍が急成長した可能性がある。
また年齢は最年少が 事故当時5才となり、事故当時5歳以下の子どもが初めて甲状腺がんと診断された。チェルノブイリでは、5歳以下の子どもが多数甲状腺がんとなったことから、検討委員会はこれまで「被曝の影響とは考えにくい」との見解を示してきた。一方、事故当時5歳以下の子どもに甲状腺がんが多発したのは、事故5年以上経ってからと指摘する研究者もおり、今後、この世代で甲状腺がんが多発するかどうかが、ひとつの焦点となる。
(検討委員会の資料より)
男女比は男性25人に対して女性は32人と約3:4の比率となっている。甲状腺がん専門医である清水一雄委員が、「通常の乳頭がんは男女1:7。男性の比率が多いことについて検討しているのか」と質問。これについて大津留氏は、集計の問題であるなどと回答した。
本格検査で摘出手術を受けたのは14人増えて30人となり、全員が乳頭がんと診断された。
2巡目は、1巡目からの期間をもとに、福島第一原発の「直近地域」は⒉5年、その他の地域は2年との平均有病期間をあてはめて外部比較を行った。まだ2次検査が終わっていない地域があるため、数字は今後変わる可能性があるが、現在のところ、福島第一原発の「直近地域」が39倍の多発。「郡山市」が35倍、二本松などの「中通り中地区」が25倍と続いている。」
先行検査(1巡目)結果~2011年~2013年
次いで、2011年から2013年まで実施された先行検査(1巡目)の確定結果が公表された。前回の口頭発表と変わらず、穿刺細胞診で、悪性または悪性疑いと診断された子どもは116人と報告された。
資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/167944.pdf
平均年齢は震災当時14.9才で、最年少は震災当時6才。男女比は男性39人に対して、女性が77人と約1:2の比率だった。また平均腫瘍径は13.9ミリで、最大は45.0ミリだった。
これまでに102人が手術を受けており、手術後の組織診断によって、乳頭がんが100人、低分化がんが1人、残る1人は良性結節と確定した。これまで低分化がんは3人公表されてきたが、昨年11月に甲状腺がん取り扱い規約が改定されたことに伴う変更という。
1巡目と2巡目の健診をあわせて、悪性・悪性疑いと診断された子どもは、前回より6人増え、172人となった。
1巡目については平均有病期間を4年にあてはめ、外部比較をしたところ、二本松など「中通り中地区」が約50倍の多発。白河など「中通り南地区」と「いわき市」が約40倍。「郡山市」が38倍、「23年度地区(おもに避難区域)」と「会津地方」が約30倍と続く。
記者会見(55分)
全体の資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-23.ht…