環境省が設置している「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」において健康リスク評価が妥当だとされている「国連科学委員会(UNSCEAR)」報告書について、2008年のチェルノブイリ原発事故報告書にある被ばく線量評価と比較した。2つの報告書は、線量の区分けに違いがあるが、日本の線量が過大にならないように留意し、地図の色を揃える加工をほどこした。専門家会議では、「日本の汚染はチェルノブイリ事故に比べてはるかに低い」と言われてきたが、住民の平均的な実効線量について比較すると、チェルノブイリく比べて福島県の汚染は決して低くなく、むしろ上回る地域も存在する。
甲状腺等価線量
甲状腺の等価線量については、チェルノブイリ原発事故では100ミリシーベルトを超える子どもが多数おり、被爆線量には差がある。
事故後1年間の1歳児の甲状腺等価線量(mSv)
(UNSCEAR2013報告書 p187 Figure C-X の線量区分および色分けより)
未就学時の平均甲状腺線量(mSv)
(UNSCEAR2008報告書 p130-131 表 B10. 就学前の小児より)
実効線量
一方、内部被ばくと外部被ばくを合算した実効線量については、福島市の1年分の実効線量がチェルノブイリ事故の汚染地域の20年間の積算線量と匹敵することがわかる。
成人の事故後1年間の実効線量(mSv)
(UNSCEAR2013年報告書(本文和訳先行版) p30 図VI)
成人の1995年から2005年における20年間の実効線量(mSv)
(UNSCEAR2008 年報告書 p134-138 表 B13 合計線量1986年より 州(市)ごとに加重平均)
なお、甲状腺の等価線量については、平均30ミリを下回ると評価されている一方、バックグラウンドが高い中のスクリーニング検査しか実測値はない。6月に放射線医学研究所が提出した母乳に含まれていたヨウ素をもとに一回急性接種と想定して推計した値では、400ミリを超える母親もいるなど、高い甲状腺被ばくをしている個人がいることは否定できない。現在、東京大学も森口祐一教授らが、大気汚染の常時監視システムに付着したダストサンプリングの解析を進めており、今後、さらに緻密な推計や評価が期待されている。
(福島事故後の母乳測定データ解析(放射線医学研究所)
国連科学委員会2013年報告書(英文)
http://www.unscear.org/docs/reports/2013/13-85418_Report_2013_Annex_A.pd…
国連科学委員会2013年報告書(本文和訳先行版)
http://www.unscear.org/docs/reports/2013/14-02678_Report_2013_MainText_J…
国連科学委員会2008(英文)
http://www.unscear.org/docs/reports/2008/11-80076_Report_2008_Annex_D.pd…