2014/03/27 - 06:00

がんリスクめぐり激しく応酬〜健康管理のあり方会議

福島原発事故に伴う被曝影響について議論し、福島県内外の健康診断や医療支援策を検討している環境省の専門家会議の第4回目の会合が26日開催され、元国会事故調委員で高木学校の崎山比早子氏と鹿児島大学の秋葉澄伯教授が出席。専門的な立場から意見を述べた。
 
利益相反の専門家関与を批判
崎山さんは、「電気事業者を監督すべき立場にあった規制当局がその任務を果たしておらず、事業者は歴代の規制当局に規制の先送り、規制を緩めるよう強く圧力をかけていた」と指摘。特に、ICRP委員に対しては、放射線影響協会を通じて、国際会議に関わる旅費等を長年渡していたとして、利益供与を受けている専門家が市民の健康管理のあり方などを決める審議会のメンバーになっている異常な状態をただす必要があると主張した。
 
その上で、低線量被ばくによる晩発障害に関してしきい値はなく、「リスクは線量に比例して増えるとするしきい値なし直線モデル、LNTモデルが国際的な合意事項)だと説明。放射線感受性は年令や個人によって異なるため、弱者を考慮した対策が必要だと述べた。
 
また、政府関係者が100mSv以下ではリスクがあると科学的に証明されていないと主張していることに対し、広島・長崎の寿命調査14報(放射線影響研究所)では「放射線が安全なのはゼロの時のみ」だと結論づけていることを紹介。線量と疾患の関係は、被ばく後15年でははっきりせず、53年経ってより分かってきたとして、福島の被ばく影響も早急に結論を出さず、長期にわたって調べなければならないと主張した。
 
一方、秋葉澄伯教授は、ガンマ線のレベルが年5〜10ミリシーベルトと放射線量の高いインドのカルナガパリ地域についての研究を説明。疫学的な観点から、この地域においては、がんの過剰相対的リスクが低い事実を紹介した。
 
がんリスクめぐり激しく応酬
崎山氏の意見に対し、委員からは質問と反論が集中。まず、国立医療福祉大の鈴木元委員は、放影響研の寿命調査の論文は「200ミリ以下について有意差がないと書かれている」と反論。これについて、崎山氏は論文には「定型的な線量閾値解析では閾値は認められなかった。ゼロ線量が最良の閾値推定値であった。」と書かれていると答えた。さらに崎山氏は「福島原発事故の影響は、たばこや肥満など、他のがんリスクと比較するのは間違え。幼児は煙草を吸っていないが、等しく放射能が降った」と強調した。
 
これに対し、ICRP委員でもある丹羽は「そういう議論をしてるのではない。誰が一番困ってるかと言えば福島の人たち。両親が離婚しても避けなくてはいけないほどのリスクなのかというようなことを我々は議論してるんだ」と気色ばんだ。
 
崎山氏は年間1ミリシーベルト以上の場所に住んでいる人たちへの健診や補償を確約することが、この委員会が目指すべきものではないのか?と逆に委員側に問いかけたところ、長瀧座長「いまは1ミリシーベルトとかいう観念的な議論をしているのではない。」と述べた。
 


 
配布資料
資料1:今後の議論のスケジュールについて
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-04/mat01.pdf
資料2-1:第1回から第3回専門家会議での確認事項のまとめ
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-04/mat02_1.pdf
資料2-2:今後の線量把握・評価について
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-04/mat02_2.pdf
資料3-1:崎山比早子氏 提出資料
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-04/mat03_1.pdf
資料3-2:秋葉澄伯氏 提出資料
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-04/mat03_2.pdf
資料4:被ばくと健康影響について
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-04/mat04.pdf
 
座長
長瀧 重信 国立大学法人長崎大学 名誉教授
委員メンバー
明石 真言 独立行政法人放射線医学総合研究所 理事
阿部 正文 公立大学法人福島県立医科大学 理事兼副学長
荒井 保明 独立行政法人国立がん研究センター 理事、中央病院長、放射線診断科長
石川 広己 公益社団法人日本医師会 常任理事
遠藤 啓吾 京都医療科学大学 学長
大久保―郎 国立大学法人筑波大学 医学医療系 保健医療政策分野 教授
春日 文子 国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部長 日本学術会議 副会長
佐々木康人 医療法人日高病院 腫瘍センター特別顧問
宍戸 文男 公立大学法人福島県立医科大学 医学部放射線医学講座 教授
清水 ―雄 日本医科大学付属病院 内分泌外科 主任教授
鈴木 元 国際医療福祉大学クリニック 院長
祖父江友孝 国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科環境医学 教授
中村 尚司 国立大学法人東北大学 名誉教授
丹羽 太貫 公立大学法人福島県立医科大学 理事長付特命教授
伴 信彦 東京医療保健大学 東が丘看護学部 教授
本間 俊充 独立行政法人日本原子力研究開発機構 安全研究センター長
 
【取材制限に関する記事】
「 健康管理のあり方専門家会議」をめぐり再度、環境省に文書を送付しました(2013年12月24日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1708
環境省「被曝影響会議」撮影禁止の方針〜副大臣は再検討と発言(2013年12月19日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1704
環境省の取材制限に対し、抗議文を送付しました(2013年12月16日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1702
 
【会議に関する動画、記事】
環境省「被曝影響会議」撮影禁止の方針〜副大臣は再検討と発言(2013年12月19日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1704
第1回住民の健康管理のあり方に関する専門家会議(2013年11月11日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1675
住民ら「結論ありきのメンバー」と批判〜環境省健康調査専門会議(2013年11月1日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1670
第3回 住民の健康管理のあり方に関する専門家会議
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1733
 
<関連サイト>
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html
 

 


 

Standing Together, Creating the Future.

OurPlanet-TVは非営利の独立メディアです。視聴者の寄付を原動力に取材活動を展開しています。あなたもスポンサーとして、活動に参加してください。継続的に支援いただける方は会員にご登録ください。

※OurPlanet-TVは認定NPO法人です。寄付・会費は税額控除の対象となります。