(原発被災者が9日、基本方針の閣議決定に反対し、復興庁に申し入れをした)
今年8月30日に基本方針が示された子ども被災者支援法の基本方針について、復興庁は、約4900ものパブリックコメントを反映しないまま、ほぼ修正なしで閣議決定されることが9日、分かった。
OurPlanetTVが入手した「子ども被災者支援法基本法案の修正について」と題された文書によると、1、施策推進の基本方針の方向性、2、支援対象地域など、9点の修正があるとしている。しかし、実際に中身を見ると、パブリックコメントで求められていた本質的な修正はなく、これまで国が実施してきた政策から踏み出す内容は全く盛り込まれなかった。
除染と健康調査、露骨に〜むしろ後退か
今回の修正で、30日の基本方針をむしろ後退させたと見られるのが13条だ。復興庁は、これまで、子ども被災者支援法の1条(目的)、8条(支援対象地域)、13条(放射線による健康への影響に関する調査、医療の提供等)で、それぞれ「基準線量」が異なることも可能との解釈を示してきた。
しかし、8月30日の「基本方針案」では、具体的な線量基準を示さず「相当の線量」との概念を提示。これに対し、市民や自治体は、「汚染状況重点調査地域」を「支援対象地域」にするよう求めらていた。「汚染状況重点調査地域」とは2012の時点で、年間1ミリシーベルトを超えるとされる地域で、国が除染の財政的な支援などを行うことが定められている。復興庁はこうした市民の指摘を恐れ、敢えて、除染と健康調査について異なる記述をすることで、「健康調査」を実施する範囲を縮小しようとした可能性がある。
同日、福島県や宮城県の被災者らが、抜本的な修正なく基本方針を閣議決定することに反対して復興庁に申し入れを行ったが、政府は、今週11日にも、同基本方針を閣議決定すると見られる。復興庁によると、パブリックコメントで多かった意見は、(1)公聴会開催など被災者意見の反映、(2)支援対象地域の設定、(3)福島県外での健康調査、(4)自主避難者向けの住宅政策としているが、これらの集計内容をどのように公表するか、明らかにしていない。
子ども被災者支援法は去年6月21日に国会で成立し、同月27日に施行。1年経っても基本方針が示されていなかったために、今年8月20日に、被災者が裁判を提起し、その10日後に、復興庁が基本方針を公表した。同法は、放射線の影響は科学的に立証されていないことを前提に、避難するかしないかなど個人の選択を尊重する「避難の権利」」や国の責任による健康診断や医療支援を謳っていた。
子ども被災者支援法の実効的な運用を求める市民団体「子ども被災者支援法市民会議」のメンバーは明日、午前11時半から集会を開催し、12時には復興庁との交渉を予定しているほか、定例の閣議が予定されている11日の午前8時半から1時間、官邸前で抗議行動を行うとしている。
子ども被災者支援法修正文書(全文)
http://www.ourplanet-tv.org/files/20131009.pdf