(映像は9月30日に「原発事故子ども・被災者支援法 京都フォーラム」が京都府に要望書を提出している様子)
京都去年6月に成立しながら1年以上たなざらしとなっていた「原発事故子ども・被災者支援法」。8月に復興庁がようやく方針案を示したものの、同法が求めている支援対象地域の「線量基準」を示さず、福島県の浜通りと中通りと呼ばれる東部33市町村のみを支援対象地域として指定した。また、同法による新規の生活支援策や健康診断などの対策を示さなかったため、被災者や支援者からは、「基本方針の撤回」を求める声があがっている。
自治体が異例のパブコメ提出
このため、同庁が実施した「パブリックコメント」は、締め切りが基本方針の公表からわずか3週間だったにも関わらず、全国から4,900の意見が寄せられた。また、このパブコメには、一般市民だけではなく、支援対象地域に含まれなかった千葉、茨城、栃木3県の13市も批判の意見書を提出。異例の事態となっている。
今回「パブコメ」を提出したのは、千葉県の野田市、柏市、鎌ケ谷市、松戸市、白井市、流山市、佐倉市、我孫子市、印西市の9市と茨城県の取手市、守谷市、常総市の4市、栃木県の那須塩原市の計13市。国に対し、支援対象地域を広げ、子どもや妊婦の健康支援を重視するよう求めた。13市はいずれも、年間1ミリシーベルト以上の汚染があるとして、国から除染に対する財政支援が実施されている「汚染状況重点調査地域」。我孫子市などは「汚染状況重点調査地域は支援対象にすべきだ」と主張している。自治体が一般市民向けの「パブコメ」に意見を提出するのは極めて異例だ。
全国の地方議会で意見書採択相次ぐ
このほか、福島県に隣接している宮城県丸森町が緊急の要望書を復興庁に直接届けたほか、全国の地方議会でも相次いで意見書を採択。自主避難者が多数在住している京都府の田辺市では9月30日に意見書を採択。「公聴会の開催や住民・避難者へのヒアリング、被災当事者・支援者との協議などの措置を早急に行うこと」「同法第8条1項に定める支援対象地域設定のための「一定の基準」について、合理的・科学的な基準を明らかにすること」などを国に求めている。
市民の動きも活発だ。福島県や関東などから京都府内に避難している母親ら約10人が9月30日、「原発事故子ども・被災者支援法 京都フォーラム」を設立。復興庁が8月末に基本方針案を示した「原発事故子ども・被災者支援法」について、山田啓二知事あてに、基本方針の策定にあたっては京都で公聴会を開くよう復興庁に要請することなどを求めた。
復興庁に苛立ちの声相次ぐ〜支援法のパブコメは約5千通
復興庁の対応はいまだ不透明
復興庁によると、23日が締め切りだった「パブコメ」に4900通で、現在、内容を整理しているとしている。「パブコメ」の内容をどのように公表するかや、本方針に反映させるかなどについては未定だという。根本大臣は、基本方針を示した8月30日、今月の臨時国会前までに基本方針を閣議決定したいと述べていた。
福島県内の一部の被災自治体にしか目を向けていないように見える国の原発被災者対策に、支援策から取り残された地域や自主避難者を抱える自治体から、いら立ちの声があがっている。