子ども被災者支援法の基本方針を正式に公表した30日の記者会見で、根本匠復興大臣は支援対象地域を定めなかった理由について、100ミリシーベルト以下の健康影響は小さいとして、健康リスクの懸念を示す画一的な線量水準を設定するのは適当でないとの認識を示した。同支援方針は9月13日までの2週間、パブリックコメントを募集した上で、閣議決定をしたいとしている。閣議決定までに、福島県内で説明会を開く予定だ。
根本大臣は3月7日、国の原子力災害対策本部で、原子力規制委員会に対し、線量水準に応じたきめこまやかな防護策の検討を依頼。これを参考にしながら、子ども被災者支援法の線量基準の考え方をまとめたいとしてきた。
このため、復興庁をはじめ、環境省や規制庁、原子力被災者生活支援チームなどが有識者ヒヤリングや各種モニタリングの把握などの様々な取組みを実施。これらのことを踏まえて、今後の対応に関する関係者間での意見交換をしてところ、「ICRPの国際的科学的な知見によれば、100ミリシーベルト以下の発がんリスクの増加は、他の要因による発ガンリスクの影響等によって隠れてしまう程度」であるため、「20ミリシーベルトや1ミリシーベルトといった線量水準は、安全と危険の境界を意味するものではない」との共通認識が生まれたという。
さらに「個人線量に関するデータに基づくと、同一地域でも、被曝線量は生活パターンによって異なる」「具体的な防護措置はモニタリング、健康管理、除染など様々な政策を適切に組み合わせるべきである。」といった認識を共有。20ミリシーベルトを下回る空間線量水準においては、住民の健康に影響が出る特定の線量数値があるとするのは合理的ではないとの議論を踏まえ、子ども被災者支援法の基準についても、画一的な線量水準を定めるのは適当ではないとの結論に至ったと説明した。
除外された宮城県丸森町
復興庁が示した支援対象地域は福島県内の中通りと浜通りの33市町村だ。原発からの距離や政府の避難指示区域との距離、自主避難者の数、「相当の線量」など複数の要素を勘案して決定したという。しかし、似たような条件で設定された文科省原子力損害賠償紛争審査会の賠償s指針では、白河などの県南地域と同等の扱いを受けてきた宮城県丸森町は含まれなかった。
これに関して根本大臣は、「丸森町の中に、事故直後、毎時1.0マイクロシーベルトを超える地域が存在したのは把握している。しかし、毎時1.0マイクロシーベルト以上の放射線量が観測された地域はの大半は山林であり、福島県内に比べて、必ずしも健康不安を感じているっと言えない」と発言。支援法の担当者によると、丸森町の避難者数は、福島県内に同水準の線量が計測された地域に比べ、かなり少なかったことによると述べた。
なお、同基本方針において、支援対象地域のみを対象とした支援施策は、自主避難者の福島県内への帰還を促進するための「子ども元気復活交付金」と自主避難者が避難先で公営住宅に入居する際の条件を緩和する「公営住宅への入居の円滑化支援」の2つのみ。今年のゴールデンウィークから実施されている母子避難者向けの「高速道路の無償化」では、今回決定した支援対象地域に加え、丸森町が含まれている。
パブリックコメントの募集(9月13日締め切り)
http://www.reconstruction.go.jp/topics/m13/08/20130830101245.html