国連「健康に対する権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏が、27日の国連人権理事会(ジュネーブ)で、日本政府に対して避難エリアの厳格化などを勧告したことに関連し、29日、市民が緊急集会を開催した。市民らは、国連の勧告を歓迎し、日本政府に対し、勧告に従うよう求める声明を採択した。
集会を呼びかけたのは、国際環境NGOFoEジャパンなど市民団体。集会では、まず国連人権理事会で発言を行ったNGOのひとつ、ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子さんや市民放射能測定所の岩田渉さんなどとスカイプで結び、ジューネーブの最新情報が報告された。伊藤さんは、海外メディアもこの勧告に大きな関心を寄せていると報告。「海外ではすでに福島原発事故は終わったかのように伝わっているが、日本の実情を知らされて驚いているメディアも多い」と原発事故の影響について、世界に発信する重要性を強調した。
この後、グローバー氏の報告書が指摘した「避難」「健康調査」「被曝労働」「リプロダクティブ・ヘルス」「情報公開」「原発事故・子ども被災者支援法」などに関して、各分野に詳しいNGOの代表が、専門的な立場から内容の評価を行った。
避難基準と健康調査
福島老朽原発の会(フクロウの会)の阪上武さんは、報告書が、人々が年間1ミリシーベルト以下の地域で生活する権利を有すると踏込んでいる点を高く評価。除染の限界が見える中、政府は「20ミリで暮らしなさい」という方向に向いていると強く批判した上で、この勧告に大きな意味があると述べた。また、日本政府は、同報告書が「日本政府は、20ミリで帰還を勧奨している」と記載していることついて、そのような事実はないと反論しているが、阪上さんは「実際に伊達市の特定避難勧奨地点では、去年の暮れに、20ミリを下回るとして、避難指定が解除されている」と非難した。
FoEジャパンの満田花夏さんは、健康調査について、年間1ミリシーベルト以上の被ばく線量の地域で実施するよう勧告している点を高く評価。また尿検査や血液検査の実施についても求めており、市民の願いに沿っていると歓迎した。また、日本政府が、勧告に対して「すでに実施している」と回答するしつつも、「1ミリ以上の地域で実施する科学的根拠がない」と反論していることを紹介し、政府の対応があまりにも不誠実であるとして、厳しく批判した。
情報公開と住民参加
今回の報告書には、全ての項目にわたって、情報の透明性と政策決定への住民参加を促している。これについて、情報クリアリングハウスの三木由希子さんは「住民が自己決定をするためには、きちんとした情報が必要となる」「情報へのアクセスは、健康への権利を享受するためには不可欠な要素であると強調している点が、この報告書の特徴だ」と語った。その上で、情報公開の透明性を確保するためにも、情報政策の転換を求めていく視点が必要だと訴えた。
集会では、日本政府が同勧告を受け入れ、原発事故によって影響を受けた被害者の生存権を保証するよう、政策の抜本的見直しを求める共同アピールを採択した。市民団体らは、賛同署名を集め、政府に同勧告の履行を求めていくという。
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「避難基準の厳格化を」日本に勧告〜国連人権理事会
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1589
共同アピールに関する署名サイト(避難の権利ブログ)
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-3d9f.html