原子力規制委員会は2日、関西電力の大飯原子力発電所(福井県おおい町)の敷地内に活断層があるかどうかを確認する初の現地調査を実施した。大飯原発は7月に3、4号機が再稼働し、現在、唯一運転している原発だが、規制委が活断層と判断した場合、運転停止を求める方針を示している。
問題となっている破砕帯「F―6」。2号機と3号機の原子炉建屋の間を南北に走り、3、4号機の原子炉冷却に必要な海水を取り込む設備を横切っている。関西電力は、活断層で出はないと否定してきた。
島崎邦彦委員長代理は調査後、記者会見で追加調査をする可能性に触れた。4日に東京都内で開く会合で結果を評価する。また、これまで活断層が存在する可能性に言及してきた東洋大学の渡辺満久教授は、海岸沿いのトレンチ部分において、関西電力があるとしてきた「F―6」の破砕帯がなく、別の位置に破砕帯があったと指摘。活断層であるかどうかは判断できないとしながらも、「否定出来ない」と話した。
規制委の田中俊一委員長は、活断層の存在ついて、「クロや濃いグレーなら運転停止を求める」との見解を示している。同原発は全国で唯一稼働しているが、活断層と判断すれば稼働中の3、4号機の運転停止を求める可能性がある。
提供:原子力規制委員会
現地調査後の記者会見 一問一答
Q、調査の感想は?
A、島崎邦彦(原子力規制委員会 委員長代理)
現場に来てみないと分からないことがたくさんありました。たくさんの情報を得る事ができた。
A、岡田篤正(立命館大学 グローバルイノベーション研究機構 教授)
報告書を見ただけではなかなか分からない。現場で見て、ああこういうことだって、いろんなデータを詰め合わせてこれから考えるべきだと思う。
A、廣内大助(信州大学 教育学部 准教授)
断層に関して、色んな構造を見学することが出来た。一定の解釈では説明出来ない部分も実際にあると感じた。もう少し必要な調査、こういうのがいるんじゃないかと、提案していきたい。
A、重松紀正(産業技術総合研究所 活断層地震研究センター 主任研究員)
私自身、大飯原発に来るのがはじめてで、今まで書類でしか見ていなかった。実際どういうふうなものか、見ることができてよかった。一日という非常に短い時間しかとれなくて、かなり限られた情報しかない。どこまで何が出来るか、難しいところもある。今日見た限りのことを元にできる範囲のことをやろうと考えております。
A、渡辺満久(東洋大学 社会学部教授 変動地形学)
F6の位置も含めて、少し修正が必要だとなと。具体的なものを見ることができたので、これからしっかり議論しようと思います。
Q、今後、関西電力に追加調査の指示を出すのか?
A、島崎邦彦(原子力規制委員会 委員長代理)
日曜に会合を開き、今回見てきたことの評価をする段取りになっています。その段階で、もし必要であれば、再調査というものが出て来るのも可能性の1つとして考えられる。
Q、関西電力は中間報告で、F6破砕帯は見つからなかったとしているが、大場浜のトレンチを見ていて、破砕帯は見つかったのか?
A、渡辺満久(東洋大学 社会学部教授 変動地形学)
今までのバックチェックに現れていた、関電さんが示してたF6というものは、はっきりしたものは観察できなかったと思いますが、そうでない場所にはっきりとした破砕帯はあったと思います。
Q、別の場所というのは台場浜に?
A、渡辺満久(東洋大学 社会学部教授 変動地形学)
そうです。
Q、破砕帯の場所が違う場所で見つかったと。F6の破砕帯が見つかったと捉えてもいいのでしょうか?
A、渡辺満久(東洋大学 社会学部教授 変動地形学)
位置的には、今まで関電の資料で示されていたF6ではない。だけど、はっきりした破砕帯があって、海成層を変異させていることは確認出来た。時代はよく分かりません。
Q、F6と考えてよいのか?
A、渡辺満久(東洋大学 社会学部教授 変動地形学)
私はF6の延長上で考えればいいと思います。
Q、今日見られた破砕帯、活動性はどう見るか?
A、渡辺満久(東洋大学 社会学部教授 変動地形学)
地層の時代がまだ分からない。100万年も前ではない。海のたまった地層が、断層でずれていた。変異した事は間違いないと思います。
Q、火山灰が見つかっているが、活断層の可能性があるということになるかか?
A、渡辺満久(東洋大学 社会学部教授 変動地形学)
今は否定できない。まだはっきりと申し上げられません。
A、島崎邦彦(原子力規制委員会 委員長代理)
基本的には、今新しい規制を制定しようとしている。そのことをふまえて総合的に判断する。今問われているのは、どのような安全性があるのかということが根本的であって、何万年という数字の定義ではない。重要なのは、大飯原発の安全性であって、それを踏まえた上で、基本に立ち返って議論をする。
Q、電力会社の調査の後ではなく、前に注文を出した方がいいのでは?
A、島崎邦彦(原子力規制委員会 委員長代理)
そういう意味では、限られた資料について、判断をしようとしていますが、それで足りないということであれば、追加調査をこのような形で求めるのも1つ、日曜にどのような議論をするのかで決まる。
Q、山頂付近のトレンチ調査で、粘土のようなものが見つかったというお話を聞いた。実際にあったのか?それは断層活動によるものか?
A、島崎邦彦(原子力規制委員会 委員長代理)
どちらもYESだと思います。
A、岡田篤正(立命館大学 グローバルイノベーション研究機構 教授)
あると言えばある。幅も場所で違ってくるし、断層というのは岩石で出来てたから、何億年、長い年月で出来た。年代を限られるかどうか、最終活動時期がいつなのか?最も新しい時期、どの程度動いているか、これから資料を集めて考えるべき。
A、廣内大助(信州大学 教育学部 准教授)
山頂のトレンチで出たものが、断層であることは間違いない。いつ動いたのか。どう連続するのか、僕自身は、もう少し調べる必要があると思っている。
A、重松紀正(産業技術総合研究所 活断層地震研究センター主任研究員)
山頂で出て来たものは、明らかに断層。粘土を確認したのも事実です。どういう粘土鉱物が入っているのかを見て、今後総合的に判断すべき事。
A、渡辺満久(東洋大学 社会学部教授 変動地形学)
断層運動で出来た粘土を確認しました。
Q、現地調査を行い、活断層の疑いがあるということを、これまでの見解よりも強くお持ちになったか?
A、岡田篤正(立命館大学 グローバルイノベーション研究機構 教授)
現時点では、直接の答えはできない。新しい地層も、年代を言わないといけない。上部の方の地層では、切れているものは無かったが、下部にはそれがあった。年代をこれからつめないといけない。
A、廣内大助(信州大学 教育学部 准教授)
地層を変異させるような耕造を認めている。時代がいつになるかによって、それが「活」とか「活」じゃないとか、という話になる。その結果が出ないと、活断層とか、危ないとかそういうことは分からない。
A、重松紀正(産業技術総合研究所 活断層地震研究センター主任研究員)
F6で、問題になっている断層のルートは見た。はっきり地層を切っているというところは、ほとんど無かった。ボーリングといっても、基盤の中の構造を見ている。すぐに判断できることではなくて、今日集めたデータで総合的に判断するしかないと思います。
A、渡辺満久(東洋大学 社会学部教授 変動地形学)
今までと比較してということでしたら、確実に地層を切っているのを確認したので、そういう意味では(活断層の疑いの)レベルが上がったと思っている。
Q、11月4日に決断を出せるかどうか?
A、島崎邦彦(原子力規制委員会 委員長代理)
それは分かりません。