国の原子力規制を一元的に担う新組織「原子力規制委員会」が19日、発足した。福島第一原発事故の反省にたち、独立性や透明性の高い機関を目指していたが、委員5人のうち3人が、「原子力ムラ」出身と批判を受けており、抗議の中での船出となった。
この日、午後1時半から始まった初会合。庁舎となる六本木のビルの前には、規制委員会発足に反対する市民ら約80人が集まり「法律違反の人事案反対」のシュプレヒコールを上げる中での、開始となった。田中俊一委員長は冒頭の挨拶で「最も重要なことは地に落ちた信頼の回復で、大変厳しいなかでの発足だが、国民の声に耳を傾けて原子力の規制を進めたい」と述べたものの、委員会後の記者会見では、この問題へ対する追及が相次いだ。
日弁連は、更田豊志(原子力研究開発機構)と中村佳代子氏(アイソトープ協会)について、設置法に定められている欠格事由にあたるとして、人事案の見直しと求めていた。また、田中俊一氏日本原子力研究開発機構副理事長、原子力委員長代理、原子力学会会長を歴任し、長年にわたって原子力政策の中核をになってきた人物であり、原子力委員長代理をしていた2006年に、東京電力が福島で津波で電源喪失をすると予測していたにもかかわらず、対策を立てなかったとして、作家の広瀬隆氏らが東京地検に刑事告発している。
放射線の影響は心の問題
気になる放射線による被爆リスクについての考え方だが、田中委員長は、これまで「100mSvというのは健康に大きな影響がない」と発言。原子力損害賠償紛争審査会では、最後まで自主的避難者への賠償に反対してきた。また中村委員も「低線量被曝では子供と大人で発がんリスクに差がなく、原発事故による住民の被曝線量も十分に低い」と発言している。
健康問題への対応について問われると、中村委員は「お子さんのへの放射線の影響は、お子さんの影響だけでなく、それを取り巻く保護者の方、祖父母のご不安といったもので、頭で割り切れるものではなく、心の問題だと思っています。」と解答。また更田委員は「医学的な影響以上に不安や親御さんの思いなど、純粋に生物学的な影響ではなく、様々な因子を捉えた議論が必要」だと話しました。
また年間20ミリシーベルトという避難基準について、田中委員長は「どう考えているか非常に難しい質問だ」と解答。島崎委員のみが「大変高い数値であると考えている。当然、暫定的なものだと思う」と言い切った。
職員も「原子力ムラ」一色
新しい原子力規制庁は、職員も、ほとんどが「原子力ムラ」出身。大半を原子力・安全保安院出身者が占め、それに文科省や安全委員会などが続く。透明性の確保が求められている同庁で重要となってくる広報の要を担う広報公聴課長は佐藤暁氏。今年の春まで、原子力災害現地対策本部住民支援班の室長として、避難をめぐる問題で、住民から強い批判を浴びていた。今後、どこまで情報の透明性を高めていけるか、その対応が注目される。
原子力規制委員会委員の人事案の見直しを求める日弁連会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/12080…
関連動画
広瀬隆氏が、規制委員長候補の田中俊一氏を告発
www.ourplanet-tv.org/?q=node/1419