避難したくてもできないー。
福島県内の未就学児を持つ家庭を対象にしたアンケート調査が20日発表され、大半の家庭が放射能汚染下での子育てに不安を抱えていることが明らかとなった。
今回、調査を行ったのは、宇都宮大学国際学部文化公共圏センターの「福島乳児・妊産婦支援プロジェクト」と福島県内のNPO法人「うつくしまNPOネットワーク」、東京に拠点を置く「福島乳幼児・妊産婦ニーズ対応プロジェクト」の3団体。原発事故に伴う「避難」に関するニーズや実態を明らかにしようと去年の9月から10月にかけて、乳幼児のいる家庭300世帯にアンケート調査を実施。238人の保護者から回答を得た。
(調査資料より)
その結果、全体の92%にあたる218人が、放射能汚染について子育てに不安を感じていることがわかった。また、どのように対応したいかとの質問に対しては、今いる所より放射線の少ないところに避難したいと答えた人は49人で21% 。避難を考えてはいるが、周囲の様々な事情がある人は32%にあたる76人にのぼった。また、避難できない背景としては、「資金」(55人)や「学校関係」(45人)、「移転先での生活の不安」(43人)、「就労不安」(38人)のほか、「祖父母や配偶者など近親者の同意が得られない」(19人)などの理由があげられた。
(調査資料より)
自由記述では、「子どもがまだ小さいので、将来的にどのような影響がでるのか不安」「せめて土日だけでも、子どもが放射線量のないところで眠れたら」「子どもたちの30年後を考えると心配」など、悲痛な声が並ぶ。また、情報に対しても「どの情報を信じればいいのか分からない」「正確な情報を早く伝えて欲しい」「地域でもっと細かく線量を計って欲しい」といった要望が多数寄せられた。さらに、賠償などについては、「国策でしてきたことなので、国策で救助してほしい」「自主避難者にも全額補償すべき」など、国の責任を問うものも多かった。
プロジェクトの代表をつとめる阪本准教授は「避難しても出来ない人が多いことがわかった。小さな子どもを抱えた家庭では不安が全く解消していない。個別対応は必要だが、国や自治体など社会全体の支援が必要だ」と調査結果を広く活用して欲しいと話す。
乳幼児家庭への支援はこれまで、阪本准教授もメンバーとなっているグループが、支援プロジェクトと連携して県内外で実施ており、これまでに10世帯ほどの自主避難を支援してきた。今後も取り組みを続けて行く予定だ。
アンケート結果(概要)
http://cmps.utsunomiya-u.ac.jp/news/fspyouyaku.pdf
アンケート集計結果
http://cmps.utsunomiya-u.ac.jp/news/fspsyuukei.pdf