福島第一原発事故
2011/10/28 - 10:40

原子力災害対策本部は保安院?〜実態なく、違法状態か!?

原子力緊急事態宣言が出された際に、総理大臣が内閣府内に設置することを義務づけられている原子力災害対策本部が、事実上、内閣府には設置されておらず、防災基本計画にある広報窓口の一元化も全く行われていないことがわかった。原子力緊急事態宣言が出されて以降7ヶ月以上、「違法な状態」が放置されていたことになる。

原子力災害対策特別措置法の第16条によると、「内閣総理大臣は、原子力緊急事態宣言をしたときは、当該原子力緊急事態に係る緊急事態応急対策を推進するため、内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)第四十条第二項 の規定にかかわらず、閣議にかけて、臨時に内閣府に原子力災害対策本部を設置するものとする。」と規程されている。

また、2008年(平成20年)2月に中央防災会議が策定した「防災基本計画」によると、原子力災害時の情報伝達について「政府としての報道機関への発表 は原子力災害対策本部で行うとともに、現地においては、対策拠点施設 とは、区切られた現地のプレスセンターにおいて、原子力災害合同対策協議会が一元的に行うものとする。」(281ページ)とある。

しかし、実際の事務局は「経済産業省緊急時対応センター(ERC)」内で、経済産業省・原子力安全保安院の広報と同じ窓口となっている。職員人数を聞いたところ、各省庁からの派遣で入れ替わりも多く、「原子力災害対策本部の組織そのものや人数についてはよく分からない」として、官邸の内閣官房に問い合わせるよう返答された。

そこで、内閣官房の広報室に問い合わせたところ、「「原子力災害対策本部」は、経済産業省・原子力安全保安院に設置されているため、ここには事務局はない」との回答。3月15日の官報によると、「原子力災害対策本部」の設置場所は「総理大臣官邸」と書かれているが、官邸には事務局も広報担当者も存在しないことがわかった。また、3月11日以降、「原子力災害対策本部」による記者会見やプレス発表は一切行われていない。

なお、災害基本計画よると、原子力災害が起きた場合、「国民が総合的な情報の入手を可能とするポータルサイト等の情報提供窓口の設置に努める」(同281ページ)と書かれている。しかし、現在、「原子力災害対策本部」への問合せ先を知るためのサイトすら存在せず、一元的に情報を得ることは全く出来ない。情報公開請求のための電子政府(http://www.e-gov.go.jp/link/disclosure.html)も、「東日本大震災復興対策本部」は窓口が整理され、情報公開請求ができるのに対し、「原子力災害対策本部」の窓口も存在しない。

原子力災害対策特別措置法や災害基本計画における原子力災害の項目は、1999年に発生した東海村のJCO事故を受けて出来た法律であり、計画である。事故当時、原子力安全委員会が、原子力推進側の立場にある経済産業省にあることに批判が集まり、原子力安全委員会は、省庁改編にあわせて、内閣府に設置された経緯がある。こうした経緯を鑑みると、避難指定や避難解除などの様々な決定権限を持つ原子力災害対策本部の事務局が、経済産業省に事務局が置かれている現状は、立法の目的から考えても、非常に問題が多いと言わざるを得ない。

原子力災害対策特別措置法
http://www.bousai.go.jp/jishin/law/002-1.html
防災基本計画
http://www.bousai.go.jp/keikaku/090218_basic_plan.pdf
情報公開の電子政府
http://www.e-gov.go.jp/link/disclosure.html

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