今月9日、横浜が放射性物質で汚染した焼却灰を中区の南本牧廃棄物最終処分場に埋め立て処分すると発表したが、周辺住民などからの反対の声を受け、当面、延期することとなった。今回、埋め立てる予定のセシウム量は最大で1キログラム当たり6468ベクレル。国の基準値8000ベクレルに照らすと基準値以内だが、海洋汚染を心配する地元住民の理解を得るまでは凍結する予定だ。
では、他の自治体はどうか。首都圏の自治体を調べてみると、基準値以下の焼却灰は処分している自治体もあることがわかった。また、横浜では、5月半ばまで、焼却灰をセメント会社に販売し、再利用していたが、これらのセメントは、原発事故のあった3月11日以前と変わらない流通ルートで、一般の工事などに使われていることがわかった。
東京都
東京都の下水道局によると、23区内では焼却灰を一括して東京湾に浮かぶ中央防波堤内埋立地に埋め立てている。9日発表の最新の汚染焼却灰測定結果によると、葛西水再生センターでは焼却灰からセシウム134が12000Bq/kg、セシウム137が4000Bq/kgと高濃度放射性物質が検出されているが、これらも中央防波堤に移送されている。
一方、多摩地区では、7施設(北多摩第一、北多摩第二、南多摩、浅川、多摩川上流、八王子、清瀬)に関して埋め立て処分は行っておらず、同施設内にて一時保管がなされている。敷地が広大なため、保管場所に関しては当面問題はないとしている。
(C)東京都
千葉県
県土整備局下水道課によると、汚泥を焼却処分している県内3つの施設のうち、手賀沼終末処理場(我孫子市)で基準値を超える放射性物質を検出しており、同施設内で一時保管されている。しかし、来月中旬にも保管場所がなくなる恐れがある。このため、県では、放射性物質が濃縮される焼却処分をやめ、脱水汚泥のまま処理する対策案を協議している。また、基準値以下のものに関しては、既に埋め立て処分されている。
埼玉県
下水道局下水道管理課によると、県内5ヵ所(荒川、元荒川、新河岸川、中川、古利根川)の施設で焼却灰を一時保管している。県立最終処分場が1カ所あるものの、同処分場では、汚泥の焼却灰は受け付けていない。このため、埼玉県では処理できず、県外での処理を模索している。担当者は「埼玉にも海があれば」と漏らしている。
セメント加工
横浜市は、放射性物質が含まれた焼却灰を市内2カ所の下水処理場で一時保管するようになった5月17日までの間、これらの焼却灰をセメントとして再利用していた。市による公表しているデータによると、同月6日の焼却灰に含まれる放射性物質濃度(南部汚泥資源化センター・金沢区)は、セシウム134、137合わせて5042Bq/kg、ヨウ素131が2721Bq/kgにのぼった。
横浜市から焼却灰を受け入れていた太平洋セメントによると、放射性物質かどうかの基準であるクリアランスレベル(100Bq/kg)を下回るように、他の原料を多く混ぜ、放射性物質濃度を希釈してセメントを製造。受け入れた焼却灰は全てセメントに加工し、生コン会社に販売しているが、どのような建設現場で利用されているかなど、コンクリートに加工された先の用途については把握していないという。
環境省の試算によると、3000Bq/kgの焼却灰を再生利用したセメントを壁在等に用いた建物に居住することで受ける子どもの年間被ばく線量は0.33mSvとしている。
改良土
また、同じく横浜市では、一部の焼却灰を今年7月末まで全量改良土として再利用していた。再利用を中止する直前に、市による公表値が出ている同月28日の焼却灰に含まれる放射性物質濃度(北部汚泥資源化センター・鶴見区)は、セシウム134、137合わせて5909Bq/kgにのぼる。
横浜市の焼却灰を受け入れていた横浜改良土センターでも、セメントと同様、放射性物質かどうかの基準であるクリアランスレベル(100Bq/kg)を保てるよう、他の原料を多く混ぜることなどで焼却灰に含まれる放射性物質を希釈し、対応しているという。改良土は水道管工事等の埋戻しに使用されるが、その際地表から数1cmから1m程度地下の部分のみにそれを用いることで、放射線量を数10分の1に留めることができるとしている。