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「黒い雨」検討委員会はじまる〜5つの研究課題を公募へ

投稿者: ourplanet 投稿日時: 月, 11/16/2020 - 01:19




原爆投下後に降ったいわゆる「黒い雨」の被害をめぐり、厚生労働省は16日、国の援護対象区域を再検証する検討会の初会合を都内で開いた。厚労省は事前に準備していた5つの調査内容を説明。公募によって研究グループを選び、報告書をまとめるとの内容で了承を得た。委員からは、放射性微粒子をめぐる新知見や被爆者の手記を生かすよう求める声があがったが、それらが検証課題に盛り込むかは未知数だ。

厚労省が示した検証課題は以下の5つ。

○ 原爆由来の放射性物質を確認する課題
(1)気象シミュレーション
(2)地域の土壌調査
(3)原爆投下時の気象状況等に関する文献等調査
○ 健康影響が生じているか確認する課題
(4)広島赤十字・原爆病院におけるカルテ調査
(5)相談支援事業受診者の疾患罹患状況の統計解析、アンケート調査


これに対し、広島大学の鎌田七男名誉教授は、福島第1原発事故のなどにより得られた最新の知見を活かし、放射性微粒子についても検証課題に含めるよう要望。また元気象庁気象研究所研究室長の増田善信さんは、広島原爆死没者追悼平和祈念館に保管されている被爆者の手記をデジタル化し、当時の証言を解析して被曝実態を解明すべきとの意見が出された。

しかし、沖縄徳洲会湘南鎌倉総合病院附属臨床研究センター放射線治療研究センター長で、国際放射線防護委員会(ICRP)や国連科学委員会(UNSCEAR)の委員も務めた佐々木康人座長は、これらの意見の扱いを決めないまま、当局案への同意を求め、委員の了承をとりつけた。厚労省は20日までに委員のコメントを受け付けるとしているが、委員の意見がどのように検証に生かされるかは明らかにされていない。


厚生労働省の資料にOurPlanetTVが赤字で加筆

実働部隊となるワーキンググループとは
厚労省の担当者によると、それぞれのワーキンググループは入札資格のある研究グループや民間機関を想定しており、今年度中には入札を実施。ワーキンググループの成果が事実上、検討会の報告書となると見られる。研究の進捗にあわせて検討会を開催するが、具体的なスケジュールは不明。ワーキンググループの研究費として、来年度の概算要求に1億5000万円を計上しているという。

研究課題のうち、(1)の放射性物質の分布を探るシミュレーションや(5)がん登録等を生かした病状調査などは、環境省が実施している福島第一原子力発電所事故に関する委託研究に類似していることから、これらの研究グループが参画し、国の主張を裏付ける役割を果たす可能性もあり、被爆者団体や広島県や市からの推薦された委員が参加している検討会の存在が骨抜きとなる恐れも否めない。

今回の検討会は、広島地裁が今年7月、「黒い雨」訴訟の原告84人全員を被爆者と認めた判決を受けて、国が控訴決定と同時に設置を表明したもの。厚労省の担当者は「訴訟のための検討会ではない」と説明するが、原爆投下から75年も経過して、一から大掛かりな調査を行うことに対して、疑問の声も多い。控訴審の第1回口頭弁論は11月18日の広島高等裁判所で開かれる。

第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14655.html

資料
資料1 第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会開催要綱
資料2 原子爆弾被爆者援護施策の概要及び対象地域について
資料3 第一種健康診断特例区域等の検証における課題について(案)

参考資料
参考資料1 関係条文
参考資料2 原爆被爆者対策基本問題懇談会意見報告(概要)
参考資料3 昭和51年度広島、長崎の残留放射能調査報告書
参考資料4 昭和53年度広島、長崎の残留放射能調査報告書
参考資料5 黒い雨に関する専門家会議報告書
参考資料6-1 長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告書
参考資料6-2 「長崎原爆残留放射能プルトニウム調査報告書」検討報告書
参考資料7-1 原爆体験者等健康意識調査報告書
参考資料7-2 広島原爆”黒い雨”にともなう放射性降下物に関する研究の現状
参考資料8 「原爆体験者等健康意識調査報告書」等に関する検討会報告書



「第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会」参集者

荒井史男(弁護士)
一ノ瀬 正樹(武蔵野大学教授・東京大学名誉教授)
岩崎俊樹(東北大学大学院理学研究科特任教授)
鎌田七男(広島大学名誉教授・元広島大学原爆放射線医科学研究所長)
木戸季市(日本原水爆被害者団体協議会事務局長)
小池信之(広島市副市長)
佐々木康人(沖縄徳洲会湘南鎌倉総合病院附属臨床研究センター放射線治療研究センター長)
柴田義貞(長崎大学客員教授)
永山雄二(長崎大学原爆後障害医療研究所細胞機能解析部門分子医学研究分野教授)
増田善信(元気象庁気象研究所研究室長)
山澤弘実(名古屋大学大学院工学研究科総合エネルギー工学専攻教授)




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