福島第一原発事故
2015/10/09 - 00:31

甲状腺がん「チェルノブイリの多発傾向と酷似」〜疫学専門家

 
福島県内の子どもの甲状腺がんが多発している問題で8日、岡山大学の津田敏秀教授が外国人特派員協会で記者会見を開き、多発の原因が「被ばくによる過剰発生」であるとした論文の概要を説明した。津田教授は現在の状況について、「チェルノブイリにおいて、4年以内に観察された甲状腺がんと同じような状況にある」などと述べ、今後さらに大規模な多発が起きる可能性があると警告した。
 
津田教授は会見でまず論文の概要を説明。甲状腺の超音波スクリーニング検査を受診した子ども約30万人の検査結果を分析したところ、中通りの中央地域(二本松市、本宮市、三春町、大玉村)で通常より50倍、平均でも30倍の多発が起きていると指摘した。また、2014年から始まった2巡目もすでに10倍以上の多発が観察されおり、1巡目の数を超えている地域が存在すると説明。現在は、チェルノブイリで4年以内に観察された甲状腺がんと同じような状況にあり、今後、チェルノブイリで起こった5年目以降、6年目以降の大きな多発が起こることは避けがたいとの見方を示した。
 

  
時期、尚早か?
国内の疫学者から「時期尚早」との意見が出ていることについて津田氏は、海外の学会でポスター発表などを通じて、世界の疫学者たちと議論を重ねてきた経緯を説明。「いっときも早く論文にすべきだ」と強くハッパをかけられたことが、今回の論文に結びついたと解説した。
 
また今回の多発は「過剰診断」や「スクリーニング効果」であるとの主張に対しては、通常のスクリーニング効果は3〜4倍かせいぜい5〜8倍であると述べ、今回のデータは一桁多いと説明した。津田教授は、「大規模な甲状腺エコー検査によるスクリーニング検査は存在しないと言われるが、チェルノブイリでは、事故後に生まれた子ども約4万人に対してスクリーニング検査を実施していると紹介。その4万人からは1人の甲状腺がんも出ていないと述べた。
津田教授は今後、異なる意見の研究者と直接議論する機会を持ちたいという。
 
 
 
配付資料
(1)論文:”Thyroid Cancer Detection by Ultrasound among Residents Aged 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014″ 全文PDF
(2)論文概要(英文)
(3)論文概要(アブストラクト日本語訳)
(4)最新データ(2015年8月31日公表)に基づいたパワーポイント
 
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