2012/10/11 - 06:30

原子力規制委員会~公安警察に委員会監視を要請

写真:警察に抗議する市民を制止する原子力規制庁職員(右)麻布警察署の警察官(中央)
 
先月9月19日に発足した原子力規制委員会が、委員会の傍聴者やメディアを監視するために、警察を要請していたことが10日わかった。
 
委員会の傍聴者やメディアを監視していたのは、麻布警察署から来たと名乗る公安警察。原子力委員会が開催される13階会議室の一番後壁の出口付近に待機し、取材に来ているメディアや傍聴者を確認しては逐一メモをし、時折、廊下に出て無線で内容を報告していた。
 

写真:規制庁前で抗議していた市民が傍聴に入室した途端、メモを取る警察官。耳にはイヤフォン、胸には傍聴者やメディアとは異なる赤いストラップの入館証を下げていた。
 
委員会10分ほど前に、傍聴者の数人が警察が監視していることに気づき、「あなたは誰ですか?何をしているのですか?」と詰め寄ったところ、「規制庁の要請で来ている。それ以上、話す必要もない」と回答。OurPlanetTVに対して、撮影をやめるように声を荒げた。市民は「何のための警戒なのか」「一般市民の知る権利を侵害してる」と廊下まで出るように求めたが、警察は「自信を持って仕事をしている」と応酬し、一時、押し問答となった。
 
委員会の監視に警察を要請していたことに関して、原子力規制委員会の田中俊一委員長は会見で、「委員会で声を聞くまでは、全然知りませんでした」と回答。
 
原子力規制庁の森本英香次長は「庁舎内の秩序維持という観点から、警察署に対して警備を依頼しているのは事実」とし、制服を着用しない公安警察である理由については、「制服で入っていただくことが、むしろ威圧を与えるようなことを、僕の直感的にはそう思いますので、そういうことがないように、最低限の警備という形で取り組んでいくのがいい」と説明した。
 
傍聴者の監視問題では今年7月、当時の原子力・安全保安院が、関西電力大飯原発(福井県)の断層調査をめぐる専門家会議の傍聴希望者の情報を警察に提供した可能性が指摘され、その後、保安院の森山善範原子力災害対策監が記者会見で、警察から詳細な説明を差し控えるよう要請を受けたことを明らかにした経緯がある。しかし、会議室内部に警察が入り、市民を監視した例はなかった。
 
森本次長は「保安院の時にどうだったのかは、知らないが、規制委員会はじまって試行錯誤している状態で平穏な会議の維持ができれば柔軟に対応したい」と話した。
 
「日本の公安警察」の著者でジャーナリストの青木理さんは、「規制庁が警察に警備を要請し、公安警察が情報を収集しているとしたら気持ち悪い話だ。規制庁のモラルが問われる。規制庁のトップが、池田克彦元警視総監であることとも関係がある可能性が高いのではないか」と指摘している。
 
今回のように、市民やメディアの「知る権利」を侵害したケースとして、2002年に当時の防衛庁が、情報公開請求した市民の身元を本人に内緒で調査しリスト化していた例がある。毎日新聞のスクープによって発覚した後、防衛庁は調査を行い、官房長と文書課長が更迭され、事務次官ら計29人が減給処分。長官は給与20%2カ月分自主返納した。毎日新聞はこの記事で、2002年度の新聞協会賞を受賞している。安心して政策決定プロセスを傍聴出来るという民主主義の根幹を揺るがす今回のケースは、防衛庁と同程度か、それ以上に大きな問題をはらんでいる。
 

記者会見一問一答
 
Q、公安警察の警備は委員長の指示か?
 
田中委員長
「先ほど委員会で声を聞くまでは、全然知りませんでした。事務局の方で何か。」
森本次長
「平穏に会議を行っていただくことは大事なこと。事務方としてその点に心を配っている。庁舎内の秩序維持という観点から、警察署に対して警備を依頼しているのは事実。そういう観点で入っていただいている。今後、会議が平穏に進められるということであれば見直すこともあろうかと思います。」
 
Q、保安院の時に、会議室内部に警察が入り市民を監視した例はなかったが?
 
森本次長
「保安院の時にどうだったのかは、知らないのですが、規制委員会はじまって試行錯誤している状態で平穏な会議の維持ができれば柔軟に対応したいと思っています。」
田中委員長
「実はこの規制委員会、私自身がいろんな方からご注意受けているのですが、1人で歩かないようにとかね。いろんな方がまだ、落ち着いていない状況もあるので、そういうことを事務方がご心配されたんだと思うんです。基本的にこのようなことは、不要な世の中になるのが本来の姿だと、私個人は思いますけども、今そういうことですので。」
 
Q、警備の目的は?
 
森本次長
「平穏に会議を進めていただくこと以外はありません。制服で入っていただくことが、むしろ威圧を与えるようなことを僕の直感的にはそう思いますので、そういうことがないように、最低限の警備という形で取り組んでいくのがいいのだろうと思います。平穏に維持ができるのであれば、柔軟に対応していきたい。」
 
Q、市民と原子力規制庁との初めての話し合いが5日に行われ、市民側が事前に送った質問・要望書が委員長や委員に届かず事務方のみの判断で質問に答えていたが?
 
田中委員長
「宛名が委員会宛でなかった。事務方は事務的に受けて、処理されたと聞いています。中身も、委員長になる資格はありませんとか、いろいろと書いてありまして、その人間にいろんな要望とか質問とか出ているので、私は一般人としては理解しがたい文章だなあと思いながら拝見しましたけど」
 
Q、市民と原子力規制庁との話し合いが、2回目、3回目とあった場合に、委員長や委員の方が目を通す形になる予定はない?
 
田中委員長
「そうですね。無制限にやっていったら私の仕事ができなくなりますし、そういう方たちはそういうことで一生懸命やられるんだと思うんですけど限度があると思います。」
 
関連動画
2012年10月6日配信
大飯原発活断層交渉〜規制庁の職員、委員に渡さず
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1452
2012年9月20日配信
原子力規制委発足~「原子力ムラ」批判の中
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1443
2012年7月3日配信
「大飯原発の破砕帯〜関電資料出さず審議延期」
大飯原発の審議予定の意見聴取会で、市民の傍聴が別室に変更されたことについては、保安院耐震安全審査室の小林勝室長は「参加者の事前申し込みリストを見て、警備上の理由から判断した」と話した。この日の発言で、傍聴希望者の情報を警察に提供した可能性が指摘された。
 

 

 

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