福島第一原発事故
2012/06/14 - 22:44

【被災者支援法】1ミリ目指す〜「避難の権利」へ大きな一歩

福島原発事故の被災者を支援する枠組みが一歩進んだ。東京電力福島第1原発事故の被災者支援を目的とした「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進関する法律案(子ども被災者支援法案)」が14日、参議院東日本大震災復興特別委員会で審議入りした。

この法律案は、与党が議院立法として提出していた「原子力事故被災者の生活支援法案」と野党の提出していた「「子どもと妊婦を放射能被害から守る法案」を一本化したもの。被ばく地域で暮らす人たちの「避難の権利」を定めているほか、子どもや妊婦の医療費を減額したり免除したりすることなどが盛り込まれている。

原発事故が起きてから1年3ヶ月を経てようやく審議となった原発被災者の支援立法だけに、東日本大震災復興特別委員会の某調整は満員となり、立ち見が出る中での審議となった。傍聴者のなかには、福島県大熊町から会津やいわきに避難している被災者をはじめ、郡山市や福島市からも上京した人もおり、議員同士による審議を真剣に聞き入っていた。

医療支援の範囲
同法案に関しては、与党内で議論となっていた医療費を免除に関しては(13条)、子どもが鼻血を出して診察したり、ストレスからくる障害も原則として支援しすることを確認。提案者の一人である民主党の谷岡議員は、放射性物質、生活の激変によって生じた疾病は最大限対象にし、被害者に立証責任を負わせないと答弁した。また、子どもの医療費の提供の範囲についても、事故時に胎児や子どもであった被災者は、18歳以上になっても、一生涯にわたって医療に提供が行われることとした。また、自民党の森まさこ議員は「これにとどまらず、将来的には大人にも広げていきたい」と抱負を語った。

支援を受ける対象地域
原発の被害に関しては、既に、福島復興特措法が成立している。復興特措法と同法案との違いについて、増子勝彦議員(民主)は、「特措法は福島という地域の再生支援。今回の法律は被災者そのものの生活の支援。」と回答。同法案は、福島県に限定せず、放射能による被害を受けているその他の地域も対象になるとの考えを示した。また、具体的な数値目標について谷岡議員は「支援対象地域については、ICRPなど国際基準は年間1ミリシーベルト。国が一方的に線を引いてきた愚を繰り返してはいけない。タウンミーティングなどを開き被災者自身が決めていくようにしたい。」と答弁した。

「避難の権利」を保証
また、同法案の中で最も強調する点として、同じく提案議員の金子恵美議員は「被災者一人一人が、居住や移動、帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるということを法律で明確にしている点。」だと回答。この法案によって「避難の権利」が法的に保証される意義を語った。更に、みんなの党の川田議員は「あえて「内部被ばく」を条文に入れたのは、「内部被ばく」という概念をしっかりと位置付けていくため。 健康被害を未然に防止するということを盛り込めたことは重要。」だと語った。

市民と作った法案
審議は1時間半で終了。委員長提案で本会議へと送ることが議決された。最後に、平野達夫復興担当大臣が発言し「議員の方々の本法成立に向けた努力に敬意を表する。本法案の実施に向けて最善の努力をしていく所存。」と政府の考えを表明。委員会が終了すると、同法の提案議員が党を超えて握手をし、傍聴席の市民一人ひとりと握手をし、抱き合う姿も見られた。

被災者の生活支援や子どもや妊婦の支援に関しては、去年10月頃から、与野党それぞれで議論を開始。今年5月に入って、政府との折衝や与野党協議を繰り返し、内容を一本化した。その過程で、福島の被災者やNGO、市民団体なが度々院内集会を開くなどして、市民と議員が議論を重ねながら法案を練り上げていった。医療支援が子ども・妊婦に限られるなど、不十分な部分は残されているものの、被災者の生活支援については大きな一歩。福島をはじめとする被災地の市民に歓迎されている。

同法案は、参議院本会議で採決された後、衆議院に送付されるが、社会保障の一体化審議で情勢の見通しのつかない衆議院をいつ通過するのか、重要な局面にある。国会会期は6月21日。傍聴に訪れていた市民らは一様に、ぜひ、衆議院を通過させ、この法案に書かれている内容を具体化して欲しいと語った。衆議院の早期を求め、これまで子どもの被曝問題に取り組んできた団体らは、6月18日に法案が通過するよう署名を提出する予定だ。

原発事故被害者のいのちと暮らしを守るための立法と国の施策の実現を求める署名
http://inokurashomei.org/

子ども・被災者支援法案
子ども・被災者支援法案要綱
子ども・被災者支援法案概念図

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