福島第一原発事故
2011/09/04 - 23:37

朝日がん大賞〜山下氏受賞に福島県民ら抗議

日本対がん協会(垣添忠生会長)が9月1日、今年度の朝日がん大賞には長崎大学大学院教授で、7月に福島県立医科大学副学長に就任した山下俊一氏(59)を選んだと発表したことに対し、「子どもたちを放射能から守るネットワーク」は4日、撤回を求めて朝日新聞宛に抗議文を提出した。
 
今回、問題となっている「朝日がん大賞」とは、日本対がん協会が、対がん運動に功績のあった個人および団体に贈るもので、毎年開かれるがん征圧全国大会で表彰しているもので、「朝日がん大賞」は、将来性のある研究や活動等を顕彰するため、朝日新聞の協賛を得て、2001年度に創設された。山下氏の大賞受賞は、チェルノブイリ原発事故後の子どもの甲状腺がんの診断、治療や福島第一原発事故による福島県民の健康調査や被曝(ひばく)医療への取り組みが評価されたためという。
 
これに対して、子どもたちを放射能から守る福島ネットワークでは、山下氏は、福島の低線量被ばくのリスクを否定する言動をとり、子どもや妊婦を被ばくさせたとして、山下氏への「がん大賞」授与の撤回を求めるとともに、紙面で謝罪するよう抗議文を提出した。
 
OurPlanetTVの取材に対し、朝日新聞は、「朝日がん大賞は、公益財団法人日本対がん協会が選考し、受賞している」とし、「質問に答える立場にない」と回答。また、抗議の数についても、件数や内容について公表していないとしている。

<抗議文>
                                  2011年9月3日
     「朝日がん大賞に山下俊一氏を選んだ朝日新聞社に抗議します」
 
                    子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
                               代表世話人 中手聖一
                               世話人一同  
 
貴社の9月1日付けの新聞を見て、わたし達「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の一同、また、一緒になって、福島の子どもたちを守る市民運動に参加している関係者は愕然とし、同時に怒りを抑えることができませんでした。
 
なぜ、山下俊一氏の行っている行為がこのような形で評価されるのか、理解に苦しみます。氏の発言が、子どもたちを守ろうとしている福島の親たちをどれだけ苦しめてきたのか、またこれからも福島医大の副学長として福島県民を苦しめるつもりなのか、貴社の選考の基準には入っていなかったのでしょうか。
 
山下俊一氏は、3月の下旬から福島県に入り、「年間100ミリシーベルトでも問題ない。妊婦でも子どもでも危険はない」という発言をくりかえしてきました。当時の同氏のこの発言は、福島市政だよりにも掲載され(別添1)、福島県内で「安全神話」を築き上げてきました。
同氏は医学系の雑誌には、低線量被ばくのリスクを指摘する記事を書きながらも、福島では逆に低線量被ばくのリスクをまったく否定する言動をとったのです。
 
ご存知のように、低線量放射線の影響は「閾値なしの線形モデル」を採用し、線量に応じた影響が生じるというのが、国際的な常識となっており、保守的なICRPもそれを認めています。
 
実際には、福島では、多くの地域では、本来であれば、一般人の出入りが禁じられる放射線管理区域以上の高い汚染が広がり、チェルノブイリ事故と比較しても安心・安全とはいえないレベルの状況が続いています。同氏の発言は、多くの方の避難を躊躇させ、また、福島に住み続けることについて安心感を得させ、家族不和まで生んでいるのです。さらに、「危険かもしれない」という市民が憂慮の声をあげられない空気をつくりだしました。
 
この世に家族ほど大切なものがあるでしょうか。子どもほど大切な存在があるでしょうか。それなのに、同氏がつくりだした「安全神話」により、家族を守れずに、私たちがどれほど苦しんだか、言葉には言い尽くせないほどです。わたし達福島県民は、それでもなんとか明るく前向きに生きようと日々戦っているのです。
  
私たちは、このように山下俊一氏が、県の放射線リスク・アドバイザー、県民健康管理調査委員会の座長にあることに強い危機感を覚え、同氏の罷免を求める署名運動を行い、6607筆の署名を得ました(別添2)。また、全国の署名運動では、1ミリシーベルト順守と避難・疎開と併せて同氏の罷免を求める要請項目を加えましたが、4万筆以上の署名が集まりました。
 
このような市民運動は一切報道せず、山下俊一氏のようない人を「がん大賞」を授与するとは、御社の新聞社としての良識が疑われます。
  
わたし達は山下氏への「がん大賞」授与の撤回を求めるとともに、貴社紙面において謝罪を掲載することを求めますあわせて、このような批判があったことを、きちんと報道していただくことを求めます。
 
朝日がん大賞
http://www.jcancer.jp/archive/asahi/
 

 

 

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